「動詞事象と移動事象はどのように関連しているか?―Eat one’s wayを巡って―」
岩田彩志
この発表は二つの部分からなる。前半では、way構文の「手段(means)」タイプとされているものを再考する。一般にway構文には様態タイプと手段タイプがあるとされている。例えば(1)は(2)の二通りの解釈に曖昧であるとされている(Jackendoff 1990,
Goldberg 1995)。
(1) Sam joked his way into the meeting.
(2)
a. Sam went into the meeting by
joking. (手段)
b.
Sam went into the meeting joking.
(様態)
ここで第一の解釈を「手段」と呼ぶことに関して、実は問題がある。その問題を突き詰めていくと、実は動詞事象が移動事象を「可能化」している、と捉えるべきであることを示す。実際に、従来「手段」解釈とされていたものの大部分は、容易に「可能化」解釈として捉え直すことが出来る。
しかし一見したところ、「可能化」という概念が上手く当てはまらないような例も見つかる。後半では、その一例としてeat one’s wayを取り上げる。(3)に「可能化」の解釈を機械的にあてはめると、「食べることが、パン等を消費することを可能にする」という奇妙な解釈を生みだしてしまう。
(3) He ate
his way through bread and butter and ham and pickles.
しかしCroft (2009)のフレーム意味論的分析を援用すると、eat one’s wayはやはり「可能化」で説明出来ることが判明する。
岩田彩志