2014年3月8日土曜日

関西大学英語学会大会 シンポジウム

時間:2014年3月23日(日) 14:00-18:00
場所:関西大学千里山キャンパス第一学舎 尚文館マップの6番) 501

関西大学英語学会では下記シンポジウムを行います。英語学・言語学の今後ぜひ一緒に考えてみませんか。
(第37回大会全体のスケジュールはこちらです)

シンポジウム (関西認知言語学研究会共催)


講演者    岩田彩志(理論言語学の観点から)
            「動詞事象と移動事象はどのように関連しているか?―Eat one’s wayを巡って―」
         石川慎一郎(コーパスの観点から)
                「コーパス研究:これまでとこれから」
         松井理直(実験言語学の観点から)
                「実験言語学の現状」
      
講演 (各45分)
全体討論  (16:30-18:00)
コメンテーター
大阪教育大学 串田秀也(会話分析)
大阪大学 秋田喜美(オノマトペ、共感覚)
京都大学 谷口一美(認知言語学)
名古屋大学 堀江薫(類型論)
東京学芸大学 松井智子(関連性理論)


司会 鍋島弘治朗
シンポジウムの背景
将来とは個人にとっての未来である。きたる数十年に英語学はどのように変わるのか。英語学・言語学におけるエビデンスの概念が大きく変わりつつある昨今、20年後の未来地図を共同で模索しつつその中でのそれぞれのあり方を考える糧としたい


参加は無料です。参加をご希望の方は spiralcricket@gmail.com  までご一報いただけると助かります。

シンポジウム後、18:30~20:30の予定で懇親会を行います。(居酒屋すっぽん 一般 3,500円、学生 2,000円)お時間がゆるせばぜひご参加ください。

なお、翌日3/24(月)には名古屋で認知文法研究会が開催されます。内容の濃い充実した会ですのでご興味がある方はこちらにもぜひご参加下さい。

関西大学英語学会第37回例会のご案内

日時: 2014年(平成26年)323 (日曜日)  1230 1800
会場: 関西大学  尚文館(大学院棟)5501教室
    (図書館の裏側にある建物です。入り口は3階です。)

1.  総会 (12:3012:45)  会長挨拶、2012(平成24)度活動報告、2012年度会計報告、
                   その他

2.  研究発表 (12:5013:50)
        織田稔 「詩の言語の言語学的理解―比喩的表現を中心に」

3.  シンポジウム (14:0018:00) 
      

非会員の方の参加も歓迎いたします。参加費は無料です。

懇親会  和風居酒屋すっぽん  1830分~2030分(予定)
多数ご参加下さいますようお願いいたします。会費は一般3,500円、学生2,000円です。

当日頂戴いたします。

2014年3月7日金曜日

シンポジウムの背景―主旨説明に変えて―

 数年前、松本曜さんがフィルモア・フェスティバルから帰ってきて、そこでの発表のほとんどが次の3つの少なくとも1つを含んでいたとおっしゃっていたことでした。

1)コーパス
2)実験
3)類型論

(なお、このシンポジウムの司会は当初曜先生にお願いしようと思ったのですが公務でご都合が未定だったので私の方で代わりにさせていただくことになりました)。
かれこれ10年ほど前に当時京大の黒田航さんが言語学の容認性判断には統計を使うべきだという発表を研究会でした際、私は「それは正しい。ただし、みんなが使うようになってから私は使う」と考えたのですが、時代は既にかなりその方向に進んできたようにも思われます。
そこで、コーパス研究で大変ご活躍の石川慎一郎先生、古くから実験的手法に親しみ、幅広い射程で研究されている松井理直先生をお迎えして、コーパス、実験、統計の現状をお話しいただこうと思いました。
一方、私の中にもアームチェア・リングイストのままですむならそのままでいたいという気持ちはありまして、現在理論的研究で国際的に活躍されている岩田彩志先生にそのあたりの将来的ご展望を聞きたいと思いました。
3点目の類型論観点ではこちらも国際的に活躍されている堀江薫先生に類型論の近年の動向も交えて言語学における理論とデータ/エビデンスの問題にご意見をちょうだいしたくコメンテーターをお願いいたしました。
 近年、言語研究の多様化が著しく、特に意味論、語用論、社会言語学、談話分析、会話分析の分野で有望な理論が登場し、着実に研究成果を蓄積しているように思えます。今回はその中から、認知言語学の谷口一美先生、秋田喜美先生、会話分析の串田秀也先生、関連性理論・認知発達研究の松井智子先生という第一線の先生方をコメンテーターにお迎えします。それぞれの分野の現状を交えて、コーパス、実験、統計に関して分野および個人のお考えと講師への質問をいただきたいと考えています。


このシンポジウムは、現在、各分野で活躍されている方々のお考えを聞いて知見を膨らませ、10年後、20年後の言語学像を共同で考えることによって、同世代や若手の研究者、研究者を目指す人々がその新しい言語学像の中で自らがどのような方向を目指していくべきかを考える一つの糧にしたい、してほしいと考えて企画いたしました。ぜひ多数の方のご参加をお待ちしています。

2014年3月5日水曜日

松井理直  「実験言語学の現状」


実験と理論は科学研究の両輪です。実験の結果を既存の理論が美しく説明できることもあれば、実験結果によって理論の在り方が変わることもあります。また、様々な要因が影響する実験結果の解釈には統計学の手法も必要不可欠です。本発表では、音韻論・統語論・意味論に関するいくつかの実験を紹介し、その結果が理論やコーパス研究とどのように関わっているかを検討することで、実験場面という非常に限定された環境における研究の利点とその限界について考えてみたいと思います。また、従来は分散分析で処理されていたデータに対し、近年開発されている新しい統計手法の利点についても簡単に触れる予定です。

2014年2月21日金曜日

岩田彩志 「動詞事象と移動事象はどのように関連しているか?―Eat one’s wayを巡って―」

「動詞事象と移動事象はどのように関連しているか?―Eat one’s wayを巡って―」

                岩田彩志

この発表は二つの部分からなる。前半では、way構文の「手段(means)」タイプとされているものを再考する。一般にway構文には様態タイプと手段タイプがあるとされている。例えば(1)(2)の二通りの解釈に曖昧であるとされている(Jackendoff 1990, Goldberg 1995)。
(1)  Sam joked his way into the meeting.
(2) a.  Sam went into the meeting by joking.   (手段)
   b.  Sam went into the meeting joking.     (様態)
ここで第一の解釈を「手段」と呼ぶことに関して、実は問題がある。その問題を突き詰めていくと、実は動詞事象が移動事象を「可能化」している、と捉えるべきであることを示す。実際に、従来「手段」解釈とされていたものの大部分は、容易に「可能化」解釈として捉え直すことが出来る。
 しかし一見したところ、「可能化」という概念が上手く当てはまらないような例も見つかる。後半では、その一例としてeat one’s wayを取り上げる。(3)に「可能化」の解釈を機械的にあてはめると、「食べることが、パン等を消費することを可能にする」という奇妙な解釈を生みだしてしまう。
(3)  He ate his way through bread and butter and ham and pickles.

しかしCroft (2009)のフレーム意味論的分析を援用すると、eat one’s wayはやはり「可能化」で説明出来ることが判明する。



岩田彩志

2014年2月10日月曜日

石川慎一郎 「コーパス研究:これまでとこれから」

コーパス研究:これまでとこれから
石川慎一郎

世界初のコーパスとされるBrown Corpusが公開されたのは1964年,本格的な言語研究に耐えるBritish National Corpusが公開されたのは1994年です。今年は2014年ですから,Brown Corpusから半世紀,BNCから20年が経過したことになります。この間,こーパスの規模はもちろん,サンプリングやアノテーションの精度も飛躍的に向上し,言語研究におけるコーパスの影響力はかつてないほど高まっています。しかし,その一方で,コーパスやコーパス分析手法のコモディティ化は,狭義のコーパス研究やコーパス言語学研究の消滅(ないしは発展形解消?)を意味しているという見解も示されています。本発表では,コーパス言語学の小史をひもときながら,コーパスのこれまでを概観し,あわせて,コーパスのこれから,言い換えれば,言語研究や言語教育において,今後,コーパスが果たしうる役割について考えてみたいと思います。

参考文献 
McEnery, T., & Hardie, A. (2012). Corpus Linguistics. CUP. [石川慎一郎訳(2014)『概説コーパス言語学:手法・理論・実践』ひつじ書房]

講師紹介
神戸大学文学部卒。神戸大学文学研究科,岡山大学文化科学研究科修了。博士(文学)。現在,神戸大学国際コミュニケーションセンター/国際文化学研究科外国語教育論講座教授。主著として『英語コーパスと言語教育』,『ベーシックコーパス言語学』他。